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ワンメディア明石ガクト氏が語る──テクノロジーの進化がメディア・コンテンツを変える!

2018年11月にNewsPicks Bookから「動画2.0」を出版し、動画ビジネスを牽引するワンメディアの明石ガクト氏。5Gの商用サービスが本格的に始まる2020年、5Gのテクノロジーによってメディアやコンテンツはどのような進化を遂げるのか。HEART CATCH西村真里子氏をモデレーターに、トークセッションを行った。前半は、テクノロジーによるメディアやコンテンツの進化や、変化の中で挑戦し続けるチーム作りなどについて語られた。

明石ガクト氏

「明石ガクト」って、どんな人?

西村:今日は明石さんとお話できるのが楽しみで、とにかく興味津々で来ました。明石ガクトさんってどんな人なんですか?

明石:僕は2014年に動画の会社ワンメディアを立ち上げました。ソーシャルエンタメ動画で活躍したいインフルエンサーと、動画や映像に携わるクリエイターを結びつけ、企画から制作、配信までを総合的にプロデュースしています。

日本には映像の制作会社が約3000社ありますが、そのほとんどがテレビ用に作って納品するだけ。僕たちの動画やコンテンツはそうしたテレビ用ではなく、SNSやYouTubeなどのモバイルデバイス、街中のデジタルサイネージなどに向けてディストリビューションしています。

明石ガクト氏

▲ワンメディア株式会社 代表取締役 明石ガクト氏
2014年6月、新しい動画表現を追求するべくワンメディアを創業。独自の動画論をベースにSNSやYouTube、OOHなどあらゆるデジタルスクリーンに対応する動画をプロデュース。2018年にNewsPicks Bookから自身初となる著書『動画2.0』を出版。その他、情報番組やバラエティ番組にもコメンテーターとして出演。前澤友作氏のYouTubeチャンネルプロデュースも行っている。

世の中はテクノロジーをきっかけに変化する

西村:ワンメディアが作る動画は、見応えがあって、メッセージが強いものが多く斬新だなと思っています。

明石:モバイルのスクリーンもデジタルサイネージも、これまでの電波が中心の世界ではできなかったことなんです。「sight update session」のテーマの中でも、今回のテーマであるメディアやコンテンツは、一番テクノロジーの影響を受ける分野だと思います。世の中が変わる順番で言うと、世の中を変えるきっかけはいつもテクノロジーなんです。

レコード時代の音楽は基本的にイントロがあって、Aメロ、Bメロ、サビと盛り上がる構成になっており、サビから始まる音楽はありませんでした。それがCDの時代になると、サビ頭の曲が増えました。

これは1990年代にサビ頭の曲が流行っていたからではありません。CDでは頭出しの機能があるので、CMの中でかかっている曲をすぐに探せるようになりました。その機能ができたことで、サビ頭の曲のセールスは好調となり、クリエイティブもそれに準じていくようになったんです。

西村:CDが出てきたことで、サビ頭の曲が増えたんですね。

西村 真里子氏

▲株式会社HEART CATCH代表・プロデューサー 西村 真里子氏


明石:今は配信が中心の時代です。Aメロ、Bメロ、サビという盛り上がりのある曲が古くなり、Suchmosのようなサビのない曲が流行るようになりました。これは音楽の例ですが、映像も同じです。テレビは電波という効率的な伝送方法を使うことで、何万台もあるテレビに映像を届けてきました。

音楽も映像もインターネットが主流になる

明石:しかしインターネットの登場と進化により、メディアコンテンツのあり方も変化しました。僕が新卒の頃は、インターネットの配信はテキストコンテンツが主流でしたが、今ではNetflixなど、大きな容量の動画の配信も可能です。

しかも、それらの映像を受け止めるスマートフォン(スマホ)やタブレットなどのディスプレイも高解像度化されました。今ではテレビを観るより、スマホやタブレットで動画を観ることに時間を費やす方が増えてきているように思います。

つまり、スマホやタブレットという観る側のディスプレイテクノロジーと、届ける側のテクノロジーが視聴者の生活を変えたのです。こうなると、視聴者にもっと観てもらうためにもコンテンツも変わっていかざるを得ません。

このように、テクノロジーがまず世の中を変えるボタンを押す。すると生活が変わり、メディアやコンテンツも変わる。メディアやコンテンツという、一見エンジニアに縁が遠そうな分野を変えるチャンスを、エンジニアはたくさん持っているのです。

明石ガクト氏

西村:明石さんはYouTubeやインターネットで、動画を見ることが当たり前になるのを見越して、ワンメディアを起業したのでしょうか。

明石:僕がYouTubeに動画を公開するようになったのは2005年。おそらくYouTubeに動画を公開した最初の1000人の内の一人だと思います。僕は大学時代、映像サークルに所属し、渋谷で着ぐるみを着てパフォーマンスを行うなどとか、少し攻めた動画(笑)を制作し、DVDにして配っていたんです。

そんなときに後輩からYouTubeを教えてもらい、ブラウザで映像が見られることに衝撃を受けたんです。しかも、遠く離れたユーザーがコメントもできる。映像業界は斜陽業界でしたが、一方でITはバブル絶頂期。映像もインターネットが主流になると直感で思いましたね。

メディアコンテンツは、テクノロジーでどう変わっていく?

西村:先ほどの話では、テクノロジーが世の中を変えるスイッチを押し、その変化に応じてメディアやコンテンツも変化していくとのこと。ARグラスなども登場してきています。動画を観るデバイスの変化によって、動画の質なども変わっていくということですね。

明石:ガンガン変わると思っています。僕が大学入学した頃に、携帯型デジタル音楽プレイヤー「iPod」の初代が発売されました。そのときからアップルは音楽再生・管理ソフト「iTunes」を提供していました。

アップルはいつかサブスクリプションが主流になり、CDを再生するプレイヤーを持つ人が少なくなることを予想していたからこそ、あの仕様にしたのだと思います。先にイマーシブなコンテンツが登場してから世の中が変わるのではなく、まずアップルがカッコいいARグラスを出し、それをみんなが買う。そこに合わせて動画を作ろうという流れなんです。

明石ガクト氏

西村:テクノロジーがどのように浸透するかを見てから、メディアが作られると。でも、「もうすぐ5G時代だから、コンテンツを作ってください」と言われることも多いのでは。

明石:そういう相談はたくさんきます。最近、Air Podsの片方を交換して、グーグルの翻訳アプリを使って同時通訳をするという裏技が話題になっているんですけど、知っています?

西村:何ですか?知らないです!

明石:お互いのAir Podsを片方ずつ交換すると、相手が話した言葉の翻訳結果が音声で返ってくる。トランシーバーみたいな使い方ができるんですよ。きっとアップルは次のバージョンで、Air Podsを交換しなくてもこれが実現できる機能を搭載してくると思います。

これはテクノロジーの種がまかれる時に、ユーザーは作り手が思いもつかない使い方をする一例です。そういう変化を見ながら、僕たちはコンテンツやメディアを作ります。例えばDMM TELLERの縦にスクロールするチャット型小説は、LINEをはじめとするメッセンジャーアプリで、文書を読むことが普通になったからこそ生まれたコンテンツです。

5Gはこの5月から商用サービスが始まりますが、5Gにぴったり合うコンテンツをクリエイターが作るようになるのは、年末からだと思います。

明石ガクト氏

西村:普及し始めて、みんなの使い方を見ながらコンテンツを作っていくんですね。

明石:映画プロデューサーの川村元気氏さんはヒットする映画を作る秘訣として「集合的無意識を捉えること」と話しています。「世の中が集合としてこう変わっている」を切り出して、コンテンツにするのがクリエイターなんです。しかし、そうした世の中の変化を作るのはエンジニアなんです。

変化の中で挑戦し続けるために、努力していることは?

西村:ワンメディアの動画には、常に挑戦が感じられます。挑戦し続けるために努力していること、大事にしていることを教えてください。

明石:変化の中で勝っていくためには、誰もが変化したタイミングで取り組むのでは遅いんです。アーリーアダプターでなければならない。一つは変化に敏感であること。

二つ目は変化の兆しがあったとき、前例がない中でチームを率いる力ですね。メンバーに「本当にこの道で合っているのか」と聞かれても「合っている」と言い切る力が必要です。

三つ目は継続する力です。いろんな経営者が成功する秘訣は「やめなかったこと」だと言います。ワンメディアを設立した2014年度の会社の売上はいくらだったと思います?当時の正社員は6人でした。

西村 真里子氏

西村:5000万円ぐらいでしょうか?

明石:年間の売り上げは5万円でした。コンビニでバイトをした方が稼げるくらいの金額しか、大の大人6人集まっても稼げなかったんです。

西村:そんな状況で、なぜやり続けられたのでしょう。

明石:まさにそこですね。僕たちが向かっている方向は、世の中が向かっている方向に合っているけど、社会を回すギアにはなれていない。そこをどう調整できるのかと、話し合っていました。目先の5万円を500万円、5000万にするのではなく、いつか確変が来るはずだという思いもありました。

ゴールを示し、手段を共有するチームビルディング

西村:時代に合わせて、少しずつ調整していったのでしょうか。

明石:時代の流れは個人の力では変えようがありません。明らかに動画は盛り上がっている。他社では上手くいっているのに、なぜワンメディアはうまくいかないのか。自分たちが変わること。そのときに大事なのは、「True North(人生の基軸)」をちゃんと示して、共有すること。

ゴールへの道はいくつかあるが、そのパス自体を目的だと思っているメンバーがいると、モチベーションが下がってしまう。最終目的地を共有し、そのためのパスには鉄道や船など、いろんな手段があることを浸透させるチームビルディングを事前に行っています。

西村:True Northに行くための変化は、受け入れるようにしているんですね。

明石ガクト氏

明石:今、偉そうに言いましたが、間違った採用をしているときがありました。大きな資金調達をしたとき、スケールするためにたくさん採用したんです。その時の「as is」に惹かれて入ってきた人がいました。

会社としてはもっと大きな目標がある。そこを目指すには、当時のas isの姿を捨てることもある。例えばInstagram中心だったのが、YouTube中心にしようというように。すると「Instagramが好きだから入ってきたのに」という声が聞こえてきた。

でも、それは僕が「うちは、最終的にこういうゴールを目指す会社なんだ。そのゴールに行くためには、いろんな道がある」という話をしなかったからなんです。今の会社で新しいことを始めたり、どこかに転職したりする場合、肝に留めてほしいのは「この仕事がしたいから」で選ばないこと。

その仕事は本当のゴールへ行く道の途中であることが多いからです。転職するなら、その会社のミッションに共感して入るべき。ミッションに共感できる場所で働くほうが、思いもよらぬ自分の力を引き出されると思います。

西村:ワンメディアのホームページでも、強いメッセージが打ち出されていますね。これは、クライアントだけではなく、これから入社する人に向けて、True Northを見せているということなんですね。

明石:僕はクセが強いじゃないですか。まず、ロン毛で髭が嫌な人は応募してきませんからね(笑)。

西村:あえて、そういうことで判断する人を除こうとしているんですか。

明石:その側面もあります。ワンメディアは上場を目指しているが、上場セレモニーのときに、ちゃんとしたスーツを着るということを、絶対やりたくないなんです。今のままの容姿でパブリック・カンパニーになりたいんです。

すると、「あいつは髭が長くてけしからん」と言ってくる人はいなくなる。昔はある程度、世の中にロールモデルがあって、それに合わせることが成功への近道でした。でも今はみんなの生活がSNSで可視化され、どこでもだれとでもつながる時代です。

いかに人と違うか、ポリシーや世界観の枠組みを示し、それと合わない人とは付き合わない方がハッピーです。ワンメディアの動画も僕もクセが強いけど、それがOKな人と一緒に仕事がしたいんです。

ワンメディア明石ガクト氏が語る──テクノロジーの進化がメディア・コンテンツを変える