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日本テレビ土屋敏男×バスキュール朴正義が対談──テクノロジーでエンターテインメントはどう変わる?【後編】

エンジニアが活躍することが期待される業界の第一線で活躍するトップランナーをお招きするトークセッション「sight update session」。第6弾は、日本テレビ『電波少年』のプロデューサーであり、現在はVRや3Dスキャナを活用したエンターテインメントを生み出し続ける日本テレビ土屋敏男氏と、バスキュール朴正義氏が「エンタメ×テクノロジー」をテーマに語り合った。

日本テレビ土屋敏男氏×バスキュール朴正義氏

新しいチャレンジに向け、どんなエンジニアと仕事がしたい?

西村:お二人が新しいチャレンジをするときに、一緒に仕事をしたいのはどのようなエンジニアでしょう。

土屋:仕事人として優秀ではない人ですね。心が動いて、気がついたらやっていましたみたいなそういう人。僕はやると決めたことは、基本的に一人でもやると覚悟する。例えば「60番勝負」という番組も、誰もこなくてもやるつもりだった。

僕は「これ、面白いんだもん」と言える人が参加するのがチームだと思っています。だけど多くの組織では、こういうことをするから、こういう人が必要と考えてチームを作ることが多い。求めているのは、そういう人じゃないんですよね。

:先日、自分の長所や強みを知ることができる才能診断ツール「ストレングス・ファインダー」を、社内でやってみたんです。そしたら、うちで活躍しているエンジニアの長所はみんな「慎重」だったんです。誰もやったことないこと開発ばかりしているのがバスキュールなので「おや?」と思ったんだけど、同時に実行力も高かったんだよね。つまり、ホントに実行するために必要な慎重なんだよね。

見たことのない世界を実現するには、やり通す覚悟と勇気、そして慎重さは必要なんだと実感しました。あと、僕や土屋さんみたいな人の面倒をみてくれる人(笑)。

日本テレビ土屋敏男氏×バスキュール朴正義氏

土屋:エンジニアにはこの人がいくんなら、一緒に俺も飛ぶぞという勇気と、面倒を見てくれる母性が求められると(笑)。

NO BORDERは、パナソニックの3Dスキャナの開発エンジニアと一緒に作ったエンタメコンテンツです。そのエンジニアはずっと3Dスキャナ開発の仕事をしていて、3Dスキャナに惚れているんです。

だから、惚れている3Dスキャナを活かしてくれる人は、みんな大好きなんです。そういう自分の開発したテクノロジーに、どっぷり惚れている人との仕事は楽しかったですね。

西村:「これが好きだから」という人たちで集まった方が、新しいチャレンジができるのかもしれませんね。

土屋:せっかくの面白いテクノロジーがあっても、マネタイズの話だけをしていては、そこで止まってしまいます。

例えば、3Dスキャナもそう。開発者の彼が、自分が開発した3Dスキャナがいかに魅力的か語ってくれたから、来場者をスキャンしたアバターを作って踊らせることを考えついたんです。彼と出会わなかったら、NO BORDERは生まれませんでした。1社だけでやれることは限られていますからね。

日本テレビ土屋敏男氏

▲日本テレビ放送網株式会社 社長室R&Dラボ シニアクリエイター 土屋 敏男氏

西村:お二人ともフットワークも軽く、いろんな方に会いに行かれていますね。

:半端ないインプットがないと、新しいものはなかなか生み出せませんからね。

西村:「1社だけでは新しいものが生み出せない」とおっしゃっていました。なぜ、生み出せないのでしょう。

土屋:会社だとピラミッドで作るので、管理するのが縦割りになるんです。縦割りになると、横で何をしているかわからない。でも、実はこの横のつながりが大事なんですよ。

ちゃんと目利きができる人同士がつながると、面白いことができるかもしれないのに、組織や会社という単位だけで動くことで、もったいないことになっている気がします。

西村:私も在籍していたことがあるのですが、バスキュールは階層もなくフラット。なのに、プロジェクトごとに全員が責任感を持って進めていく。そこが面白いと思います。

:チームも役職もないですからね。うちの会社はいつつぶれるかわからないので(笑)、社員のキャリアップにつながるよう、やりがいのあるプロジェクトばかり立ち上げている気がします。

バスキュール朴正義氏

▲株式会社バスキュール 代表取締役 / クリエイティブディレクター
株式会社LivePark 共同創業者 / チーフクリエイティブオフィサー 朴 正義氏


西村:だから、みんなが生き生きとやりたいプロジェクトができると。

:社員はみんな緊張していますけどね。

土屋:約60年続いているテレビの歴史の中で、視聴率競争でここ40年くらいのトップはフジテレビか日テレでした。
フジテレビは組織的に統制がとれておらず、どちらかというと偉い人と現場が直接結びついてパッションで番組が制作されてきました。

一方、TBSは組織のTBSと言われるように、組織がしっかりしているんです。ですが、組織がしっかりすればするほど、最終的なアウトプットにチャーミングなものが出て来にくくなる気がします。

西村:どういう上司なら、新しいものを生み出せるのでしょう。

土屋:バスキュールの朴さんやカヤックの柳澤大輔さん(代表取締役CEO)、チームラボの猪子さん(代表取締役)、ライゾマティクスの真鍋さんなど、バカ(デストロイヤー)をのびのびと泳がしているように見える組織ですね。

日本テレビ土屋敏男氏×バスキュール朴正義氏

西村:マネジメントやリーダーシップのあり方も変わってきているということでしょうか。きれいな計画をつくるより、パッションやチャーミングな発言などが大事になってきていると。

:そうですね。うちの場合は、売り上げ目標もノルマもない。唯一、決めているのが「ダサいのだけは作るな」です。

土屋:インターネットが出てきて、人と人がつながる時代。パッションが人を動かしていくのに、上司の愚痴を言って酒を飲むようなことは、もはや違うことに気づいた方がよい。インターネットは会社という組織をも変えると思います。

【Q&A】会場から寄せられた質問を紹介

10分間の休憩の後、後半のセッションが開始されました。

西村:多くの人から質問をいただいているので、どんどん答えていただきたいと思います。

西村真里子氏

▲株式会社HEART CATCH代表・プロデューサー 西村 真里子氏

Q.5Gには期待していますか?

土屋:5Gはディレイ(遅延)がなくなるだけ。演出的にはジャストでいけるので、気持ちいいと思うけど、それだけかな。それ以上何かあるのか、正直よくわかっていません。

:まず、5Gマネーに期待しています。僕たちはリアルタイムのサービスやコンテンツを作る会社。5G端末をみんなが持つようになると、端末までの電波の反応速度で、人のリアルタイムの位置がわかるようになります。

その情報を使って、何ができるのか。例えば音声ARを使って、トイレに行きたい人に「トイレはあっちだよ」「下の階が空いているよ」ということを教えるサービスができるかもしれません。そういう時代を見越したトライをしています。

土屋:口げんかや罵倒することは、ディレイがあるとやりにくいじゃないですか。例えばイタリアでは毎日「愛している」と言わないと離婚問題になるというけど、日本ではそうではない。そんなネタをもとに5Gを使って、イタリアと口げんかをするというコンテンツを作ってみたいですね。

Q.エンタメを作る時は身近、ミクロから考えるのか。それとも世界、マクロから考えるのか?

土屋:NO BORDERを思いついた最初のきっかけは、トランプ大統領がメキシコとの国境を高くすると言ったこと。ボーダーを作るのではなく、ノーボーダーにしろよと。そういう意味では、マクロな視点も必要だと思います。

:やってみたいことをやっているだけなので、そういう意味ではこういう世界になればいいなとマクロな視点を持ってやっています。

土屋さんもそうだけど、常に面白いことを探しているから、ハンディカメラを使うことも思いつく。身近なミクロの視点と世界を俯瞰したマクロの視点の掛け合わせがないと、エンタメは作れないと思います。

西村 真里子氏

Q.YouTuberの次に来るものはなんでしょう。

土屋:僕と同じ世代の人の中に、春からYouTuberになると言い出す人が出てきました。本当に浸透したなと。そこの次は、もうないんじゃないかと。

西村:VTuberはどうでしょう。

土屋:VRがまだブームになっていないのに、VTuberがきたらおかしいでしょ。何を届けるのか、コンテンツとしてラストワンマイルが整備されていないんだと思います。

僕が1964TOKYO VRを作ったのは、そのときに青春時代を過ごした人たちにヘッドマウントディスプレイで映像を見せたかったから。年老いた妻とデートをした思い出をよみがえらせることで幸せに死ねるんじゃないかと考えたんです。

終活的な意味合いもありました。そうすると年寄りもVRを楽しむようになるんじゃないでしょうか。

:ミラーワールド(現実の都市や社会がデジタル化された鏡像世界)がくるといいなぁと思います。今のVTuberはYouTuberと一緒で、視聴者との関係はそれほど双方向じゃないのと、活動範囲がスタジオというかマシンの前に限られているのがハンパな感じがあるので、視聴者も含めて全員がもうひとつの人格をもつくらいに進んで欲しいですね。

西村 真里子氏

Q.同時配信が始まりますが、新たなクリエイトの可能性を感じますか。また、動画の時代と言われていますが、その中でライブエンタメの価値はどう変わると思いますか。

土屋:動画の時代というより、誰もが動画を作れる時代になった。プロとアマチュアの垣根がなくなってきています。誰でも動画が作れる時代になったときに、これまでのプロはどうしていくのか気になるところではあります。

例えば、これまで映画は2~3時間に納まるように作ってきましたが、Netflixが登場したことで、時間にこだわらなくてもよくなりました。Netflixであれば、最初の1時間だけ観て、残りは後で観るという新しい見方ができるからです。

そういう見方をしても、最終的に人の心を揺さぶる映像を作れるのがプロでしょうね。心が動くことは、鑑賞力という受け手側の力も必要になりますが。動画が誰にでも作れる時代というのは、ハッピーな時代でもあると思います。そして、レコメンドの仕組みに長けた動画のプラットフォームが残っていくと思います。

:小さなスクリーンを眺めている時間が素敵だとは思いません。ただ今は、アドのエコシステムにお金が動いています。YouTuberも新しいライブエンタメを作るというより、お金が動くからやっているという感じがします。

何のためにエンターテインメントを楽しんでいるのか。そういう点を追求していくようなライブエンタメが出てくるといいですね。

西村 真里子氏

西村:最後に、ITエンジニアのみなさんにメッセージをお願いします。

:ちょっと先の未来を想像しながらみんな一緒にドキドキするなど、共時体験の興奮は人間ならではの娯楽だと思います。去年のラグビーワールドカップも、みんながルールを知ったり、応援する対象ができた途端に、爆発した。

そういうドでかいライブエンターテインメントを作っていきたいですね。

西村 真里子氏

土屋:この春、世界に向かってエンタメを創る塾を、カヤックの「まちの大学」に開講しようと思っています。Twitterで情報を発信していくので、興味のある方はぜひ、僕のTwitterアカウントをフォローしてください。

西村:この続きは宇宙からお届けしたいと思います。ありがとうございました。

日本テレビ土屋敏男×バスキュール朴正義が対談──テクノロジーでエンターテインメントはどう変わる?【前編】