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教育とICTのいま #01/教科学習の中でプログラミング的思考力を育む

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教科学習の中でプログラミング的思考を活用する

2020年度に全面実施される小学校学習指導要領▶参考文献[1]において、小学校段階からのプログラミング教育が必修化されます。小学校プログラミング教育の手引き(第二版)▶参考文献[2]によると、ねらいは以下のように大きく分けて3つであることが示されています。


  1. 「プログラミング的思考」を育むこと
  2. プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身 近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと
  3. 各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること

ここで示されているプログラミング的思考については、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力のことであり、議論の取りまとめ▶参考文献[3]の中で「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と示されています。したがって、プログラミング教育においては、原則として「コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させ」ることになるでしょう。

しかし、一方で学校現場の現状を鑑みたときに、上記のようなことを体験させる時間がどの程度確保できるでしょうか。数回の体験だけでは、プログラミング的思考が身に付きそうにないことは私たちは経験上知っているはずです。

そこで、数少ないと推測できるコンピュータを用いた体験と体験とをつなぎ、プログラミング的思考の育成に寄与するものとして、教科学習の中でのプログラミング的思考の活用が考えられます。

論理的思考を視覚化させる「フローチャート」

教科学習の中でプログラミング的思考を活用する際のポイントは、視覚化することです。思考は見えにくいものです。だからこそ視覚化することで考えを説明しやすくなったり、考えに広がりや深まりが生まれたりします。思考を視覚化する教具としては、例えば、ベン図やフィッシュボーンに代表される思考ツールがあります。他にも付箋紙やホワイトボードの活用も考えられます。しかし、コンピュータに意図した処理を行わせるための論理的思考を視覚化させる際に適切なツールは、フローチャートではないでしょうか。

これまでの実践から、プログラミングの考え方(順序・繰り返し・条件分岐)を視覚化することで、対話しやすくなったり、試行錯誤しやすくなったり、間違い(問題)を発見しやすくなったりして、学習者主体の学習を行いやすくなることが指摘できます。視覚化の際には、すでに決められている簡単なルールに基づいて表現できることを意識させ、フローチャートという用語を理解させます。低学年であってもツールの呼び名ですので、十分に理解は可能です。ただし、大切なことは、教科学習の目標を達成することが目的であって、決してフローチャートを作成することが目的ではないということの自覚です。

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先行実践においても、フローチャートの枠組みだけが示されたワークシートやマグネットで動かすことができる教材を教師が自作して用いたり、拡大掲示して児童と一緒に解法のための考え方を確認したりする学習場面が見られます(写真上)。たとえフローチャートを書かせる場面であっても、考え方の視覚化を優先し、その時点では、あまり細かい書き方のルールにはこだわらず、学習活動に取り組ませたりもしています。

しかし、実践者からは次のような声も聞こえているのが現実です。

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小学校プログラミング教育におけるタブレット端末活用の可能性

このような声を受け、考えられる1つの改善策はタブレット端末の活用です。タブレット端末を含む可動式PCの整備台数は、文部科学省の調査▶参考文献[4]によると852,207台にのぼり、教育用PCの4割を占めていることがわかりました(下図)。今後しばらくの間、学校教育におけるICT活用の主役は、タブレット端末になることは間違いないでしょう。したがって、タブレット端末がまだ整備されていない自治体および学校も、今後確実に整備が進められます。

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児童が1人1台、あるいはグループに1台のタブレット端末を活用することで、「教科学習の目標達成のためにプログラミング的思考を活用する授業」はどのような実践になるのでしょうか。

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タブレット端末+ソフトウェアで論理的思考力の育成に注力できる

タブレット端末とソフトウェアを活用すれば、短時間かつ容易に自分の考えを表現し、その分、より多くの時間、試行錯誤したり、考えを伝え合ったり、修正したり、全体の前で発表したりすることができると考えられます。つまり、これまで以上に論理的思考力の育成に注力できるようになるということです。

また、ICTのメリットの1つとして、ポートフォリオのようにデータを保存することが可能です。授業で活用したフローチャートが、他の学習場面でも活用できることで、考え方の理解が深まるだけはなく、プログラミングの考え方の有用性についても自覚されやすいと考えられます▶参考文献[5]。タブレット端末+ソフトウェアの活用は、まさにプログラミング的思考の可視化および主体的・対話的で深い学びに適した教具といえるでしょう。

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終わりに

新学習指導要領では、以下のようなICT環境の整備に関わる記述が初めて明記されました。そして、文部科学省は、新学習指導要領の実施を見据えて「2018年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」を取りまとめ、その方針を踏まえて策定された「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」では、2018~2022年度まで、単年度あたり1,805億円の地方財政措置が図られています。

また、新しい学習指導要領では、情報活用能力は「学習の基盤となる資質・能力」と示されました。これは言語能力や問題発見・解決能力と同じ扱いです。このような背景から考えると、小学校プログラミング教育は ICT環境の整備と共に語られる必要があるようにすら感じます。皆さんの地域や学校の状況に合わせて、最善の方法をぜひ見つけてほしいと思います。

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参考文献
[1].文部科学省(2017)「小学校学習指導要領」「小学校学習指導要領解説」
[2].文部科学省(2018)「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」
[3].文部科学省(2016)「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」
[4].文部科学省(2018)「平成29年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」
[5].Yuki Kobayashi,Hitoshi Nakagawa,Masuo Murai,Yukie Sato(2017)Practical Example of Programming Education at Public Elementary School in Japan with Attitude Survey of Students and Teachers.EdMedia:World Conference on Educational Media and Technology.645-649.

茨城大学准教授:小林 祐紀

研究分野は教育工学、教育学。授業におけるICT活用や情報モラル教育について研究会を主宰したり、指導・助言を行ったりしています。また学校現場への整備が進むタブレット端末の活用について研究活動、小学校プログラミング教育の授業開発、研修開発等、教師の指導方略に着目した授業研究やコミュニケーション力を育む授業について研究活動を行っています。


第2回/タブレット端末環境をどのように生かしていくか~新学習指導要領を踏まえた思考ツール・協働ツールの活用~