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教育とICTのいま #07/教育情報セキュリティポリシーと学校のICT(第3回)

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KUコンサルティング 代表:高橋 邦夫

文部科学省 教育情報セキュリティ対策推進チーム 副主査。元 豊島区役所CISO(情報セキュリティ統括責任者)

 

次世代の学校ICT

スマートスクール構想とは

次世代の学校ICTはどのようになるのか。一部で「今後は、ガイドラインが緩くなっていくのではないか」といった声もあるようですが、はっきりと申し上げますと、決して緩くなることはありません。解釈を少し細かく整理しようと内容を詰めているところです。

その上で、文部科学省としても、成績処理等を行う「校務系」の仕組みと子どもたちが授業で使う「授業・学習系」の仕組みをつなげられると、どんな効果があるかを検討しています。それが「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」で示された「スマートスクール構想」です。

現在でも、東京都内のいくつかの自治体では、子どもたちがコンピュータを自宅に持ち帰り、家庭学習でも使用させる取り組みを行っているところがあります。このとき、子どもたちの家庭学習の成果が学習システム内に蓄積されていきます。この学習成果を成績処理システムに取り込むことができれば、日頃の学習活動と成績処理の関係がより明確になるのではないでしょうか。

また、どのくらい家庭学習に取り組んでいるのか、授業中にどのくらい発言をしたのかといった記録を、児童生徒指導用の仕組みなどとうまく連携させると、「この子は、ちょっと積極的ではない面があるんだな」とか、「以前は積極的だったのに、最近はあまり授業で発表していないな」といったことが分かるようになります。特に、中学校は教科担任制ですので、子どもたちの変化が見えづらくなりがちですが、すべての先生方が子どもたちの情報を共有することによって、子どもたちの心の変化がつかみやすくなります。このように、子どもたちに関するあらゆる情報を共有し、教育に生かそうというのがスマートスクール構想の考え方です。

スマートスクール構想に関する実証事業

スマートスクール構想に関する実証事業には、総務省版と文部科学省版の2つがあります。総務省では「校務系」と「授業・学習系」の2つのシステムを連携させながら、どのように情報セキュリティを担保するかという点で、実証によって成果を得ようとしています。一方で文部科学省は、連携したデータを活用することによって、教育の質をどのように向上させられるかという実証です。【図2】 なお、この2つの実証事業は同時並行で連動していて、全国で5つの地域が両方の実証事業で採択されています。総務省には協議会があり、文部科学省には検討委員会があるのですが、幸い私は両方に属しているので橋渡し役となり、より安全で、より質が高いスマートスクールをめざすには、どうすればいいかを検討しております。

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3か年計画の実証事業は、2年目が終わりいよいよ最終年度に入りました。最終年度を終えた時点でもう一度、スマートスクール構想を実現するためには、こうしたネットワーク環境が望ましいのではないかというプランをお示しします。併せて、『教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』についても、来年(2020年)の夏ごろまでには見直されることをお含みおきください。

ただし、インターネットに脅威が存在する以上、ネットワーク分離を否定することはいたしません。標的型攻撃などで、もし標的になってしまえば攻撃を防ぐには大きな労力や費用が必要になります。ネットワーク分離を前提に、スマートスクール構想を実現するには、どこかで接点を設けてデータを連携せざるを得ません。このときに、どういったネットワーク環境にすべきかについては、新しいガイドラインの見直しのなかでお示ししたいと思います。

都道府県ごとに統合型校務支援システムを整備

もう一つ、実証事業が行われているのが校務支援です。これまで、校務支援システムは各自治体が予算化して整備されています。しかし、例えば東京23区の教員は都の採用ですから、違う自治体の学校にも転勤することがあります。そうすると、時間をかけて校務支援システムの操作に慣れてきたのにもかかわらず、また一から操作を覚えなくてはならない。今、こうした問題が表面化しています。また、校務支援システムの整備は、地方ほど進んでいないと言われています。東京都内は比較的進んでいますが、全体ではまだ5割以上の学校で導入されていません。

一方で、先生方が忙し過ぎて過労死ライン(時間外労働80時間)まで働いている実態が指摘されています。先生方の勤務負担や各種調査の手間を軽減することを真剣に考えると、校務支援システムは絶対に必要です。

ですから、これまで以上に校務支援システムを普及させるために、「統合型校務支援システム」の整備を都道府県単位で行えばどうだろうということで、昨年度、奈良、岐阜、長崎、高知の4つの県が採択されて、実証事業が始まりました。こうして、校務支援を充実させて先生方が働く環境を改善していきたいと考えています。ほかにも、本年度の文部科学省の予算をご覧いただくと、新しいテクノロジーを活用した教育「EdTech」など、さまざまに目新しいものがあります。「柴山・学びの革新プラン」では、これからの教育はこうあるべきという姿が示されており、日本は国を挙げて「Society 5.0」という「新しい社会」が始まると訴えています。

こうしたことからも、今後は間違いなくICTの予算はつきます。これまでのような地方財政措置だけではなく、さまざま手法を使っていきます。しかし、予算が確保できたとして来年から始めようといっても、急にできるものではありません。ICT環境の整備は、きちんとした計画を立てて、「来年にはここまで」「それを踏まえて再来年にはこうする」と整備していくことがとても重要です。コンピュータの導入とネットワークの構築を一度に推し進めようとすると、先生方がついていけなくなります。ついてこられないということは、使われないということです。そうした状態に陥った自治体では、財政部門から「大きな予算を捻出したのに、現場は全然使っていないじゃないか」と受け止められてしまい、その後の予算獲得が非常に難しくなります。そうならないために、きちんとした年次計画をまとめることが大事です。整備されたものがきちんと活用されるよう、準備を進めていただければと思います。


※学校とICTフォーラム(東京会場 2019年4月27日)講演より

※本原稿内で使用している図表は、発表資料より抜粋しております