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厚切りジェイソンが問う、トーマス・エジソンとニコラ・ステラ、どっちが優秀な事業家だった?

「Why Japanese people!?」でおなじみの厚切りジェイソン氏。芸人でありながら、IT企業の役員として数多くの講演をこなし、エンジェル投資家としてITベンチャー企業の投資なども行っている。テクノロジーとの出会いから、日本語を勉強した理由、日米の企業文化・エンジニアリング文化の違いについて語ってもらった。

厚切りジェイソン氏

Profile

厚切りジェイソン(ジェイソン・デイヴィッド・ダニエルソン)氏

1986年アメリカ・ミシガン州生まれ。ミシガン州立大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校大学院でコンピュータ・サイエンスを専攻。2005年に初来日し、旭化成の研究所に研究生として勤務。その後、米企業日本法人の設立担当者として再来日。日本のお笑い番組に関心をもち、2013年ワタナベコメディスクールの土日コースに入学。卒業後の2014年9月に「厚切りジェイソン」としてデビュー。2015~2016年の「R-1グランプリ」で決勝進出。現在はクラウドサービスのテラスカイでグローバルアライアンス部長を務めるほか、同社米国法人および子会社テラスカイ・ベンチャーズの役員を務める。

iモードではなく、iPhoneが世界標準になったのはなぜか

今はコンピュータやインターネットを使うのは当たり前。AIやビッグデータ、自動運転、ロボットなどの先端テクノロジーをいち早く活用して市場を広げていくことは、世界のどの企業でも考えていることです。

そこで、テクノロジーを取り入れて事業を広げるそのスピード感が、アメリカ企業と日本企業ではどう違うかについて、ちょっと考えてみたいと思います。

アメリカ人って、技術そのものには誰も興味がないんですよ。「たしかにこれは動いていますね、で、何? So What?」なんです。その技術をどう使えばお金になるのかがわかった時に、初めて興味を持つのです。

一方、日本企業の研究所では「すごい技術ができました」で終わっちゃうことが多いような気がします。iモードなどもそうなんじゃないですか。それで世界を変えようとまでは思っていなかった。

ところが「これを使えば、世界のビジネスがここまで変わるんです」と言い切ったのがiPhoneだったんですね。かくしてiモードではなく、iPhoneが世界標準になりました。そういう違いなんです。

厚切りジェイソン氏


日本は技術を深く磨いて、良いものを新しく作ることに関しては得意だと思うんですよ。でも、そこで終わるのはもったいない。それをどう使ってどうお金に変えるのかまでを示して持っていけば、世界中で使われるようになると思うんですよね。

技術の細かいスペックや中身よりも、どうマネタイズするのかという発想の違い、とも言えると思います。果たしてそれがいいのかは分からないんですが、資本主義というのは人間じゃなくて、マネーなんです。

GEの創業者のトーマス・エジソンは、発明家であると同時に事業家だったわけじゃないですか。彼が有名になったのは、その発明自体ではなく、それを利用して大儲けしたからです。

同時代に彼と並ぶようなエンジニアはたくさんいたんです。有名な人がニコラ・テスラ。テスラもエジソンと袂を分かった後に、自分の会社を作りますが、それがどんな会社だったか今は誰も知りません。

両者ともすごい研究者であり、エンジニアだったけど、ビジネス的にはどっちが勝ったかというと、エジソンです。実はテスラの技術の筋は良かったという説もあるんですが、大きなビジネスは展開しなかった。その結果、電気機器の発明家はエジソンということになってしまいました。

一方で、経営者がお金儲けに邁進するのは、何も自分だけのためじゃないんですね。それは自分のためにお金を使うのではなく、お金を儲けてはじめて社会貢献ができる、大きいことができる、雇用に大きく貢献できるようになるからなんです。お金を儲けて、それが循環することで、みんながハッピーになります。

日本の商人の言葉で「八方よし」という言葉があります。つまり自分も儲けるけど、社会や地域もみんな喜ぶ。そうでないと本当の商人の道は達成できない。これに似たようなことわざはアメリカにもあります。

「A rising tide lifts all boats. 」(上げ潮はすべての船を持ち上げる)。世の中が好景気な時には誰もが恩恵を受けられる。だから資本家や投資家や労働者は、そのために努力しようということなんです。

「まだ、できていないです」文化と「もう、できています」文化の違い

テクノロジーを事業に変えていくスピードが日本とアメリカで違うのは、両者の文化的背景の違いもあると思います。

日本には謙遜を美徳とする文化があるでしょう。でも、アメリカは反対。できもしないこと、できてもいないことでも、堂々と恥ずかしげもなく「あります。できます」って言い切っちゃう文化なんです。

僕が以前勤めたBigmachinesでも、そうだったんです。顧客に「こういう機能はありますか」と聞かれたら、とりあえず「あります」と答えて、後からこっそり機能を追加して、「ほらあるでしょ」と言っちゃう(笑)。

「こういうこともできますか」と聞かれれば、「はい、できますよ」と言う。顧客が導入したタイミングではできているから、いいじゃないかという発想なんです。それは嘘でも何でもないんです。買ったタイミングではできているんですから(笑)。

厚切りジェイソン氏


でも、日本では「今はまだできないですけね。将来はできるかもしれないですけど」と、慎重な言い方をしちゃう。この正直さや謙遜さは日本人のいいところでもあるんですけど、ビジネスチャンスをを逃してしまうこともあると思うんですね。

アメリカ人的、というか僕の考え方では、そもそも顧客が「これ、できますか」と聞いてきた時点で、僕らは新たなニーズを発見できたと考えるんです。だったら、それを急いで取り込んじゃう。

その時「将来は追加します」というのではなく、「もうできています」って言っちゃった方が、顧客も安心するじゃないですか。「そうか、そこまでもうできるんだ。じゃあ、いろんなことが期待できそうだね。買った!」となります。

イノベーションを生むのは80まで達成し、20を自分で考えられる人

日本に限らず、イノベーションを生み出す人は、基本自分から物事を考えられる人。そして、それを実行できて、分析して、次の戦略まで考えられる人。全てフルセットでできる人だったら、大体何でもできると思いますね。

僕の部下には、2種類のタイプの人がいました。例えば、「この製品についてテストして結果を出してくれ」と伝えると、一人は1週間後「こうやってみましたけど、こうなりまして、その後はこうなって、欲しかった結果じゃなかったけど近かった。次はこうしようと思ってますが、どうですか?」と言ってきます。

もう一人は僕が命令した時点で「どうやったらいいんですか」とすぐ聞いてくる人。そういう人は要らないですね。どうしたらいいかをいちいち説明しないといけないような人だったら、僕がやっちゃったほうが早いですから。前者のように、自分で課題を設定して、物ごとを判断できる人がいいんです。

「80までできたんですけど、その後は何で20足りなかったのか。こういうことが原因かなと考えてましたがどうですか」というところまで持ってくる人。その人は成長する。なかには、「予想は100と言われたけど、適当にやってみたら300にも達しました。予想をはるかに超えてますが、これは大丈夫ですか、何か間違えましたか」って聞いてくる人もいます。そういう答えだったら僕はもう「いや、それで行こう!」と言うしかないじゃないですか。

厚切りジェイソン氏

前回の記事で、株主を重視して、企業経営のリターンを追求するアメリカ型の資本主義と、社員はみんな家族だという日本型の資本主義とでは、資本家や投資家にとってはどっちがいいか、という話をしました。働く側にとっては、どっちがいいと思いますか?

たしかに能力がずば抜けて高い人だったら、アメリカ企業で働いたほうがチャンスが広がる可能性はあります。だって成果を上げれば、ほぼ確実にそれに基づいた待遇が得られますから、お金の面でもハッピーといえるかもしれません。

でも、みんながみんなアメリカに行けばいいとは思いません。目先の給料のことばかり考えるんじゃなくて、じっくり仕事に取り組んだほうがよい成果が上がる、と考える人なら、あえてアメリカ企業を選ぶ必要はないでしょうね。自分はどう働きたいのか、その考え方次第でどの国で働くかを決めればいいんですよ。

とはいえ、株主重視、成果重視というのは日米問わず世界の流れではあります。日本企業ももう少し、リターンを重視した経営や働き方を進めるべきだと僕は思います。その点、こうした仕組みを取り入れるのは、ベンチャー企業の方が大企業に比べると早い。

これからは優秀なエンジニアであればあるほど、就職や転職の際に、大企業ではなくあえてベンチャー企業を選び、その力で市場構造を大きく変えていくということが、増えてくると思います。その結果、日本の伝統的な大手企業は力を失い、逆にベンチャー企業のビジネススタイルや働き方が日本の将来の鍵を握るということになるかもしれない。僕はそういう未来のほうにこそ、明るさを感じますね。