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ちょまどさんのコネクティング・ドット─自分と外界の点を繋ぎ、世界を拡張してきたキャリアの軌跡を語る

マイクロソフトのクラウド・デベロッパー・アドボケイトとして活躍する「ちょまど」こと、千代田まどかさん。腐女子マンガ、オタク布教活動、プログラミングなど、好きな道にひたすらのめり込みながら積み上げてきた経験が、結果的に自分のキャリア形成に役立ったという。点と点をつないで大きな面にして、そこに自分の独自の存在感を発揮する。ちょまど流のテクニカル・キャリア形成の秘密を聞いた。

千代田まどか(ちょまど)さん

Profile

マイクロソフト コーポレーション
クラウド デベロッパー アドボケイト
千代田まどか(ちょまど)さん

津田塾大学英文学科卒業。エンジニア兼マンガ家。2016年3月~2017年6月:デベロッパー・エバンジェリズム統括本部のテクニカル・エバンジェリスト、2017年7月~2018年10月:コマーシャル・ソフトウェア・エンジニアリング本部のソフトウェア・エンジニア、2018年11月:クラウド・デベロッパー・アドボケイト。プログラミング言語C#と、クラウドサービスのMicrosoft Azure全般をこよなく愛する。Twitter・chomado ホームページ・ちょまど帳

ジョブズが愛したカリグラフィーが、Macの美しいフォントを生み出した

まず、私はスティーブ・ジョブズが大好きです。尊敬しています。少し、彼の話をします。スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは、"Stay hungry, Stay foolish"(ハングリーであれ。愚か者であれ)も知られていますが、もう一つ“Connecting the Dots”、「点と点を繋げる」という言葉も印象的です。その時点では将来何の役に立つかわからないけど、一生懸命やってたらそれが点になって、後で点と点が繋ってくるというお話です。

ジョブズはオレゴン州のリード大学というところを中退しています。必修授業は興味ないし、両親が貯めてくれた学費を意味のない教育に使うのに罪悪感を抱いたから、大学を辞めちゃった。ただ、自分の興味がある授業にだけは忍び込んで聴講しています。大学のキャンパスに美しい活字、タイポグラフィで書かれたポスターがたくさんあったから、それに惹かれ、カリグラフィー(西洋書道)の授業を聴くようになったんですね。

その授業で、美しい文字や書式、文字と文字の間のスペースの大切さ、アートとしての文字の大切さなどを知り、それが後のMacintoshの開発に繋るんです。Mac OSは昔からフォントの大切さや美しさを重要視したOSでしたけれど、ただ、学生時代のジョブズはカリグラフィーがMacintoshに繋がるなんて考えてもいなかったと思います。

千代田まどか(ちょまど)さん

他にも人生におけるたくさんの転機点が、その後どう転ぶかわからないけれど、いつか繋っていくということはあると思うんです。ジョブズは1985年にはアップル・コンピュータから追放されますね。自分で創業した会社を、外から招いた社長の手でクビになるってなかなかないですよね。かなりショックだったのではないでしょうか。

ただ、そのおかげで彼は成功者でい続けることの辛さから解放され、クリエイティブなビギナーに戻って、すごくクリエイティブな時代を過ごすことができた、と話しています。ピクサーを立ち上げたり、のちにアップルに買収されるNeXTを作ったりしました。

実は私のこれまでのキャリアを振り返った時にも、「ああ、あの時の点と点が繋がっているよな」と思うことはたくさんあります。私の“Connecting the Dots” をちょっとお話してみますね。

自分のマンガをみんなに見てほしくて、HTMLやCSSを覚えた

例えば、中学生の頃の英語との出会い。J.K.ローリングの『ハリー・ポッターシリーズ』にハマって、日本語訳が出るのが待ちきれず原書を読んでたりしたんですね。中学校から高校くらいまで英語の文法の勉強は、『ハリー・ポッター』を読むためだったと言っても過言じゃないです。当時通っていた塾の本棚から高校の英語の教科書を借りて、独学で高校1年程度の文法を勉強し、それで原書を読んでいました。中学1年生の時に英検準二級(高校中級程度)を取ったかな。

昔から、とにかく興味を持ったものには、とことんハマる性格でした。高校は自由な雰囲気の女子高でしたけれど、そこではいわゆる腐女子系のマンガや小説を描いて周囲に見せるようになりました。「ちょっとこの本読んでみて、すごく面白いよ」とか、「このマンガ、二次創作描いたから読んで!」と“腐教活動”(布教活動)にいそしんでました。

オタク(私)は基本的に、自分の趣味について話しているときが一番楽しいので、会話をするためには相手にも同じ漫画にハマってもらう必要があるんですよね。だから“腐教活動”は大切なのです。

千代田まどか(ちょまど)さん

その時の活動が今のキャリアにも繋がっていて、例えば他の“沼”に入っている人を、こっちの“沼”に落とすことって、結構難しいんですよね。すでに他のジャンルにハマってる人に「『コード学園』めっちゃ面白いから読んで」って、一方的に押しつけてもなかなか読んでくれない。

だから最初はlistenするんですよ。どういうのが好きかをまず聞く。「最近何にハマってるの?」「へーほのぼの学園もの百合が好きなんだ、わかる!癒されるし萌えるよね、ところで『コード学園』って漫画がまさにいろんな女子高生たちが出てくるほのぼの学園もので、私も密かに脳内で百合カップリングしてるんだけど、大変萌えるよ。例えば~」みたいな。

最初に相手の話を聞いて、相手の好きなこと、萌えるツボ、もしくはペインポイント、ここに困ってるんだというのを聞いて、「それなら、今お勧めなのは〇〇ですよー」みたいに自分の”沼”に誘っていく。一番大切なのは「相手のメリットになる場合だけ動く」。もし違うなら無理強いはしない。その経験と学びが今すごく役立ってます。

一例を話すと、私はマイクロソフトのクラウドサービスMicrosoft Azureが大好きで、入社前からずっと使っていました。なので、今は、いちファンとしても社員としても、Azureをみんなに使ってもらえたらとても嬉しいです。

だから、まずは相手の話をlistenして、相手の好きなこと、やりたいこと、もしくは困っていることを理解します。それで、もし解決できそうだったら「Azureのこのサービスが解決してくれるかもしれないよ」って言って紹介したりします。あくまで、その人の幸せが一番大切です。私がそのお手伝いができるなら、したい。相手のメリットになる場合だけ動く。無理強いはしない。それが大切です。

千代田まどか(ちょまど)さん

我々エバンジェリストやアドボケイト職は、こうして「伝える」ことが主な仕事のひとつ。また、こういうプレゼン以外の時間には、人々とお話しして、どんなことが求められているかなどをListenしたり、サポートしたりしている

コンピュータやプログラミングと本格的に出会ったのは大学に入ってからです。大学の入学祝いで母にパソコンを買ってもらいました。ペンタブレットもセットで。それで絵を描き始めて、ずぶずぶとハマっていきました。

描いたからにはみんなに見てほしいですよね。今だったらpixivに上げて終わりだけど、当時はなかった(正確にいうと存在はしたけど、まだそこにBL絵を自由に上げられる文化ではなかった)ので、自分でWebサイトを作らなくちゃならない。

そのためにHTMLやCSSを勉強しました。夢小説(主人公の名前を任意の名前(自分の名前など)に変換して読める小説)を書くためにJavaScriptを学び、あとはサーバー構築も勉強しましたし、サイトに掲示板を入れたくて、PHPも必死で覚えました。

津田塾大学には情報学科もあったので、そこの授業に忍び込んだりもしたけれど、出席確認の時に「履修登録してない人は受けられません」って言われて追い出されちゃった。英文科の人は履修登録できないから諦めました。

だから本当に独学でやるしかなくて。独学だから、その日覚えたことや書いたコードを、全部ブログに書いたりしてたんですね。すごく初歩的なものだから、社会人になった時に全部消しちゃったけど、残しておけばよかったなあ。

絵やプログラングの勉強をしつつ、サーバーの運用費を稼ぐために、塾講師のバイトもやってました。大学4年間、小学生にもわかるように教えてました。個別授業も集団授業もやっていたので、集団ではみんなの前で話すということもやっていた。個別で私が受け持ったのはたいていクラスになじめない子たちや、学校の勉強のスピードについていくのが難しい子たちでした。

でも、その子たちは皆何か素晴らしい才能を持っていました。例えば、電子工作が大好きとか、ネットワーク構築にハマっている子とか、電車の路線や車両の名前など全部暗記している子とか、ボカロのキャラたちをベースに素敵なマンガを描く女の子とか、物理学や化学が得意で大学レベルの知識のある子とか。

それで、こういう子たちって、普通の一般的な中学校のクラスの中では、とうてい周囲とは趣味が合わないですよね。周りの中学生たちと何を話したらいいのか分からず、孤独だと言っていました。

でも私は彼らの好奇心や才能を本当に本当に何よりも素晴らしいと思ってて、心から尊敬しており、勉強の合間や休み時間によくいろいろ教えてもらっていました。また、例えば塾のルーターの設定などは彼らに手伝ってもらっていました。「自分の居場所だ」と話してくれて、とても嬉しかったです。

千代田まどか(ちょまど)さん

絵描き、プログラミング、英語、塾講師……全部いま繋がっている

これらが私のConnecting the Dotsだったわけですね。絵描き、オタク布教活動、プログラミング、英語、塾講師のバイト。将来それらが自分の職業に繋がるなんて思ってなかった。その時、その時、一生懸命やっていただけなんです。けれども、趣味のプログラミングはエンジニアに繋がり、絵描き、オタク布教活動がマンガ家に繋がりました。

マンガを発表していたら、リクルートのメディアの忘年会に呼ばれ、そこでマイクロソフトの人と知り合って、入社面接を受けることを勧められたことをきっかけに、転職することになりました。

マンガと英語、塾講師のバイトなどで得たものは、エバンジェリストや、現在のインターナショナルチームでのアドボケイトという仕事のベースにもなっています。マンガ家とインターナショナルチームの仕事が繋がり、最近『マンガでわかる外国人との働き方』という本も出しました。

ジョブズの言ったとおり、「好きなことに打ち込むことが大事で、それが将来振り返ると今に必ず繋がっている」。高校、大学の時ははそんなことは見えなかったけれど、10年後振り返るとわかる。人のキャリアって、前もって見通すことはできないけど、はじめて振り返るとわかるものなんだと、私もそう思います。

ちょまどさんのコネクティング・ドット

まだこれから先も、たくさんの点と点が繋がり、それが拡張していくと思いますけれど、20代の今もこれだけのコネクティングができている。それはやはり、社会に出るようになってから、意識的に自分の強みを活かそうと思ったからですね。

複数の「点」を持つ

点と点の話でいうと、最低でも3つ点があるとよいと思っています。1点だけだと点だけれど、2点だと線になり、3点あると面になる。私にエンジニア、腐女子、エバンジェリスト、マンガ家という3点があるとしたら、これらを繋いだ広い三角形の範囲の人たちに私の想いを伝えることができるんですね。

ちょまどさんのコネクティング・ドット

私のSNSのフォロワーが6.5万人いるのはこのおかげもあるんじゃないかなと思っています (2019年9月現在Twitter)。しかも、点と点が離れているほど、その面積が大きくなる。例えば、マンガという入りやすい入り口を用意してプログラミングにもっと興味をもってもらう。そういうアプローチができるようになります。

また、これまで私がハマってきた、マンガ、プログラミング言語、英語というのは、実は世界の共通言語なんですね。マイクロソフトのアメリカ人からも「あ、あのAzureをマンガで描いてる人か」って認識されています。だから私がリーチできる範囲もグローバルなんです。それを意識しながらハマってきたわけじゃないけれど、結果的にそうなっていると思います。

#02 寝食削ってその世界にハマった。ちょまどさんが語る、プログラミングへの尽きせぬ「愛」とは