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時代の流れに正面から向き合い、次のテクノロジーに乗れる人間でいたいー西村真里子の「キャリア原点」

テクノロジー×ビジネス×クリエイティブを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターなどを行う西村真里子さん。イベントプロデュースから、海外カンファレンスのレポーターまで、その仕事の幅は広い。今回は日本IBM、Macromedia、Adobe Systems、バスキュール時代に磨いたマルチなキャリアと、多彩な人脈をどのように築いてきたのかを振り返り、語っていただいた。

西村真里子さん

Profile

株式会社HEART CATCH代表・プロデューサー 西村 真里子氏

国際基督教大学卒。日本アイ・ビー・エムでITエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、アドビシステムズでフィールドマーケティングマネージャー、バスキュールでプロデューサーを経て2014年に株式会社HEART CATCH設立。テクノロジー×ビジネス×クリエイティブをつなぐ“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。
J-Startupサポート企業、Art Thinking Improbable Workshop Executive Producer 、内閣府第一回日本オープンイノベーション大賞専門委員会委員、経産省第4次産業革命クリエイティブ研究会委員、武蔵野美術大学 大学院 クリエイティブイノベーション学科研究室 非常勤講師。

時代の流れと合わないツールを売る人間にはなりたくない

日本IBMから転職したMacromedia(後にAdobe Systemsに吸収)では、国内における製品マーケティングのために、ユーザーコミュニティを組織し、そこで場づくりの面白さに目覚めました。ユーザーのみなさんからは、一時は「Adobeの西村さん」として親しまれていたように思います。

自分で言うのもなんですが、社内で私のやり方に異議を言う人がいても、私はユーザーやそのコミュニティの顔が見えている自信があったし、彼らを大事にしたいという思いがありましたから、おそらくユーザーのみなさんも私を信頼してくださっていたのだと思います。

ただ、テクノロジーのトレンドというものには私も逆らうことができませんでした。もともと私がAdobeに転職したのは「FlashおよびAdobe(Macromedia)のウェブテクノロジーが好き」ということがあったからですが、そのFlashの先行きが不透明になってきたのです。

2007年にアップルが初代iPhoneをリリースして、スマートフォンの時代に突入します。当初アップルは、iPhoneでもFlashで制作したコンテンツを展開できる仕組みを作っていました。

Adobeもその方向で取り組んでいたんですが、2010年になるとスティーブ・ジョブズが、「今後、iPhoneはFlashをサポートしません。アップルとしてはHTML5をプッシュします」とを推進します」と宣言することになります。

その発表の直前まで、AdobeとしてはFlashの新機能を使って、iPhoneアプリを作ってほしいとお声がけをしていたのに、「なんだんだ!これは?」とユーザーも思うし、私もショックを受けました。

信じていたテクノロジーでユーザーさんに新しい市場で活躍していただけると思っていたのに、そのテクノロジーの活路が閉ざされた。自分の力が及ばないところでの決断により自分が大切にしているユーザーさんを困らせてしまったと、落ち込みました。

ただ、私が落ち込んでいる間にもFlashコミュニティの第一線にいた人たちも、一斉にHTML5やスマートフォンのWebに目を向けるようになりました。彼らは自分たちが作りたいものを、大きく発表できる市場に合わせて使う道具を変えていく。非常に正しい判断でものづくりをする方々の強さを感じました。

そのように既存ユーザーやクリエイターの動向が変わった時に、社内にポジションがあり代替ツールを担うこともできたのですが、私がそこにいる意味って、あんまりないんじゃないか。私が大好きなコミュニティの動向が変わるのであれば自分も変わりたい。

今のポジションにしがみついて、時代の流れと合わないツールを売る人間にはなりたくないと思ったんです。

西村真里子さん

 

さて、次はどこへ行こうか。Adobeのサンフランシスコやサンノゼの社員たちと仕事をしている中で、元々クリエイターだった人たちが自ら資金調達し、起業する例をたくさん見ていました。西海岸ではいち早く、そして日本でもスタートアップを意識したイベントも頻繁に開かれるようになりました。

そんなクリエイターたちを見ているうちに、私もこのスタートアップムーブメントの渦中に入りたい、そこでいろんなことを吸収したいと思うようになったのです。

そこでまず、Macromedia時代の上司が投資家として関わっていたGROUPON(グルーポン)に転職します。スタートアップを体験したいという純粋な気持ちだったのですが、入社早々ソーシャルメディア上の炎上事件に巻き込まれるようになります。

たかが半年で「Adobeの西村」と「GROUPONの西村」では、ユーザーからの評価も180度違う。同じ西村真里子でも、Adobeのキャップをかぶるのか、GROUPONのキャップをかぶるのかで、ネガとポジが全く反転してしまうということを身をもって体験しました。

私自身は同じ「西村真里子」でも被るキャップによって人の評価が変わることを身を持って経験できたことはソーシャルメディアと共に生きるビジネスパーソンとしての必要な接し方を学べたと思います。また、GROUPONではスタートアップとして組織やビジネスを拡大させる際のお作法を学びました。

テレビとソーシャルメディアを融合した新しいクリエーション

GROUPON在籍中に震災も起き、日本としても自分としても大きな変化を感じていた折にAdobe時代からお付き合いのあったバスキュールが新しくミクシィとJVを作るので一緒にやらないか?とお声がかかりバスキュールに転職をしました。

バスキュールでは、ソーシャルメディアがクリエイターにとって一つのプラットフォームになりうるということを実感できました。それまでのクリエイティブって、アプリを出したら終わりとか、Webのキャンペーンが終わったら終了とかだったのに、SNSの時代にはそれをプラットフォームにしたコミュニティ形成が可能になります。

テレビとソーシャルメディアをつなげて、一緒に新しいインタラクティブ体験をつくる仕事も新鮮でした。それまでテレビは番組やCMを放送したら終わり。視聴者との接点もせいぜいリモコンのボタンしかなかった。

ところが、ソーシャルメディアやアプリという新しいツールを加えると、視聴者との新たな接点が作れるのでファン化や新たな広告宣伝効果が作れます。

西村真里子さん

 

テレビ局としては、広告費がどんどんWebに流れていくことへの危機感もあったんだと思います。それに、ホットな話題はテレビやCMからではなく、ソーシャルメディアから出てくるようになってきました。

クリエイターも、これまでとは全然違う文脈でインターネットやソーシャルメディアとうまくマージしていかないと、生き残れないんじゃないかと考えるようになったんです。当時は、どうすればSNSとうまく融合したコンテンツが作れるのかという相談は多かったですね。

こうして常に時代は動いている。私は、テレビとソーシャルメディアとの融合の走りをバスキュールとして手がけましたけど、マーケティングの手法は、例えばデジタルマーケティングなど、その後もどんどん変わっていきました。

これから先もまだまだ仕事をしていきたいので、どこかでスタックしたくないんです。ちゃんと時代の流れは見ておきたいし、時代の流れが変わったときに、それに正面から向き合い、次の動きに乗れる人間でいたいですね。

そのためにはもっと勉強しなくちゃいけないですね。もともと新しい技術やマーケットを勉強することは好きだし、今の仕事は自分の性(さが)に合っていると思います。

自分のコアは何か。そこに何を積み上げていけばいいのか

社会に出た頃は「自分のコアを探さなくてはいけない」とか、「エンジニアやマーケッターとして自分の専門を何にすべきか」って、考えますよね。時にはそれが苦痛になったり、焦ったりすることがあるかもしれません。

でも、これまで年齢やキャリアを重ねてきて分かるのは、苦痛を感じてまでやる必要は全然ないし、自分のコアが変わっていっても全然構わないということ。ただ、やはりどこかに核のようなものがあると、後々に助けられることがあります。私の場合は、最初にデジタルテクノロジーのコアを学べていたことがそれでした。

今どんな新しいテクノロジーがやってこようが、それこそスマートシティのようなインフラの話題を突然振られようが、もともとの土台があるので、そうしたテクノロジーの変化を理解することはそれほど大変ではないんです。

西村真里子さん

だから、なるべく早く土台を作り、その上に新しいものをピックアップしながら、視野を広げていくことは大切だと思います。昔、IBMにいた時代に学んだんですが、OSI7階層参照モデルってあるじゃないですか。

物理層から始まって、ネットワーク層やプレゼンテーション層、アプリケーション層へと上りつめる。そんな階層モデルのイメージで自分のキャリアを考えてみることも、時には大切です。

自分のコアは何で、そこに何を積み上げればいいのか。ハードウェアの技術力があるのなら、そこにソフトウェアの技術を組み合わせればいいし、ソフトウェアの技術力があるならアプリを作ればいい。足りないところは、自分ひとりだけでなく、それこそオープンイノベーションでやればいい。

基本を押さえ、土台を作り、その上に新しい階層を積み上げていけば、どのようなお客様とも繫がれるし、自分のアドバンテージも高まる。他の業界に移っても、それが応用できるようになると思うんです。

次回 #03 テクノロジーで実現する未来 Coming soon