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スタートアップが花開くため、ポリネーターとして世界の花畑を飛び回るー西村真里子の「キャリア原点」

テクノロジー×ビジネス×クリエイティブを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターなどを行う西村真里子さん。日本IBM、アドビシステムズ、バスキュールなどを経てHEART CATCHを起業し、ポリネーターとして世界を繋げる活動を行うようになった軌跡と、テクノロジーで実現したい未来を聞いた。

西村真里子氏



Profile

株式会社HEART CATCH代表・プロデューサー 西村 真里子氏

国際基督教大学卒。日本アイ・ビー・エムでITエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、アドビシステムズでフィールドマーケティングマネージャー、バスキュールでプロデューサーを経て2014年に株式会社HEART CATCH設立。テクノロジー×ビジネス×クリエイティブをつなぐ“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。
J-Startupサポート企業、Art Thinking Improbable Workshop Executive Producer 、内閣府第一回日本オープンイノベーション大賞専門委員会委員、経産省第4次産業革命クリエイティブ研究会委員、武蔵野美術大学 大学院 クリエイティブイノベーション学科研究室 非常勤講師。

3本足で立つ「HEART CATCH」

2014年にHEART CATCHという会社を設立しました。これまでのキャリアをフルに使って、「テクノロジー×ビジネス×クリエイティブ」を掛け合わせた三本足打法でやっています。

例えば事業は堅実に展開していますが、広告やマーケティングにもっとクリエイティブなものが欲しいというクライアントには、私のこれまでのクリエイターたちとのネットワークを使って、新しい座組みを用意します。

同様に、クリエイター層が新しいテクノロジーを使って何かやりたいのであれば、エンジニア仲間を紹介し、一緒に実験を始める。案件に応じてプロジェクトを自在に組んでいくスタイルで、それをアメーバ型という人もいれば、ハリウッド型と呼ぶ人もいます。

私たちはPoC(Proof of Concept;概念実証)スタイルで、まず小さなバジェットで小さなプロジェクトを作ります。小さな着火点ですね。PoCの時だけ入って、後はコンサルティング会社や広告代理店に引き継ぐ場合もあれば、私たちのプロジェクトを継続的にスケールさせることもあります。

具体的な企業例でいうと、エイベックス社が2~3年前に「エンターテック」という分野を提唱した際に、最初の走り出しの期間でのテック系のスタートアップとの接点や、新しい分野の方々とつながっていく手法を提案するために、アイデアソンやハッカソンをご一緒させていただきました。

何度かご一緒する中でエイベックス社自身の進め方などを工夫されるようになり、後はエイベックス社が独自に展開しています。そのようなキッカケ作りをお手伝いさせていただいています。助走期間をちょっとお手伝いさせてもらうだけで、一気にブーストがかかるのがすごいと感じています。

西村真里子さん


また、トレジャーデータ社の場合は、デジタルトランスフォーメーションが求められる時代に、既存の仕事のやり方からデジタルファーストで考えるための仕掛けを、イベントやオンラインメディアを通じて、ご一緒させてもらったりしています。

このような流れができたキッカケが、HEART CATCH設立後、すぐに開催した「HEART CATCH 2015」というイベントです。

これは、日本のスタートアップが世界基準のクオリティのサービスとプロダクトを生み出すためには、デザインとマーケティングが必要不可欠だということを課題として持っていました。そこで、スタートアップをいくつか選抜し、プロのUI/UXデザイナーや大手広告代理店のマーケティングプロフェッショナルに3カ月間にわたってメンタリングしてもらいました。

この「HEART CATCH 2015」ではメンタリングに入る前と後で、スタートアップのプロダクトがどう変化したのか、ビフォーアフターショーみたいなかたちで可視化させました。日本全体として、もっとスタートアップの成功事例を作らなければいけない。スタートアップへの関心を高めないといけない。そういう思いが背景にあります。

大企業とのオープンイノベーション。スタートアップを支援

今、HEART CATCHは国が音頭をとっているスタートアップ支援事業「J-Startup」のサポートもしています。

例えばJETROと組んで、世界に自分たちのソリューションを売っていこうというスタートアップがいます。そのスタートアップに対して、プレゼンテーション方法とか、必要に応じてデザインの発注の仕方やマーケティングの方法をプログラムとして伝授するんです。

そして、ラスベガスのCESや(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)、オースティンのSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)などの出展のお手伝いをしています。

️オープンイノベーションの仕組みでお手本にできるViva Tech

出展のお手伝いはしていませんが、ここ数年注目しているのがフランスのViva Techです。大企業とスタートアップをつなぐオープンイノベーションの座組みが参考になります。
例えばL’Oreal(ロレアル)やLVMH(ルイ・ヴィトン)といったフランスを代表する大企業が、今まで自社では積極的に取り込んでこなかった最新ITテクノロジーやAR/VRのソリューションを必要としているとします。その際に、Viva Techの仕組みを使って課題をオープンにし、ソリューションを持っているスタートアップを集客するのです。

Viva Techはまだ4年しか経ってないイベントなのですが、全世界125カ国から13,000社ものスタートアップアップが注目し、集まるのでソリューションを募集するには最適なのです。

西村 真里子さん

日本のスタートアップにしてみたら、ルイ・ヴィトンのブースに自分のソリューションが出せるなんてなかなかないことじゃないですか。成功すれば最高の世界デビューの機会になります。

Viva Techに行くと、フランスが国としていかにスタートアップ に力を入れているのかがよくわかります。マクロン大統領自らが登壇して、AIやIoT人材にかける国の方向性についてスピーチするし、フランスのスタートアップはパリだけじゃなく、リヨンにもボルドーにもたくさんある。Viva Techに行けば、その全貌が一目瞭然になります。

日本にももちろんスタートアップ支援の政策はありますが、これをもっと見える化する必要がありますね。課題を実現するために必要なソリューションを持っているスタートアップやクリエイターがどんどん入っていく、そういう状況にならないといけないと思います。

自分探しは、人との接点を通してしか見えてこない

デジタルテクノロジーの可能性は、必ずしもビジネスだけに閉ざされているわけではありません。新しいテクノロジーを、社会をもっと進化させるために使うという発想もあります。ソーシャルエンゲージメント、ソーシャルスタートアップも注目され始めています。

社会を変えるためにテクノロジーが使えるということが分かれば、この国をどうしようとか、この世界をどうしようという意識が、エンジニアだけでなく、すべての人に芽生えるようになるんじゃないでしょうか。

Viva Techでマクロン大統領は「これからの時代は、シリコンバレーモデルの産業だけが盛り上がるではなく、それをいかに国民に普及させるか、国民がハッピーなかたちで、デジタルなテクノロジーを使っていくかを考えるべきである」という話をしていましたが、同感です。

私は自分の役割を「ポリネーター」(蜂のような受粉者)と位置付けています。貴重な花粉を蓄えている花畑が世界には、日本には、たくさんある。そうした国や企業やクリエイターの間を飛び回り、国の政策や企業のニーズに変化があればそれをクリエイターに伝える。

逆にクリエイターの動きを企業や国にレポートしていく。花粉を貯めて、蜜を作って運ぶことで素敵な社会ができるんじゃないか、漠然とではあるけど、そう私は思っているんです。

西村 真里子さん

エンジニアも自分が持っているスキル・アンテナで、その流れにどうしたら関われるかを考える時代になっています。仕事を選ぶ際に「現在の自分のスキルにあっている」「給料が良い」だけではなく、社会の課題を「自分ゴト化」して考えチャレンジしていくようになると住みやすい社会になると考えています。

とはいうものの、自分が何をやりたいのかよくわからないという人も多いと思います。「自分の進む道」は自己分析や自分一人で考えても導き出せず、多様な人と会い、多様な価値観に触れることでしか見えてこないのではないか?というのが持論です。

そのためには、一回外に出てみることが大切です。 会社を辞めて転職しましょうというわけではありません。勉強会やイベントに参加してみるのもいい。その際には現在の自分の仕事や環境とは違う価値観のところに行くのがおすすめです。多くの「視点」に触れることにより自分の視点が固まり、自分が社会に還元できるポイントが見えてくると思います。