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デザインにもテクノロジーにも求められる「問いを立てる」とは?

世界に影響を与える若手アーティストの一人として、世界経済フォーラムやTEDなどにも登壇したスプツニ子!さん。テクノロジーとの出会いは中学生の時のiMacでした。アーティストとしての道は、幼少時から感じていた、周囲に馴染めない “異分子”としての葛藤が背景にあったと言います。あらゆる領域でテクノロジーとの結びつきが不可欠の時代に、アーティストは何を問い、新しい世界を切り拓くために、エンジニアに何を期待するのでしょうか。

スプツニ子!さん

Profile

東京藝術大学美術学部デザイン科准教授 スプツニ子!(尾崎マリサ)さん

1985年生まれ。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでスペキュラティブデザインを専攻。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教を経て、2019年4月現在、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。「生理マシーン、タカシの場合。」「東京減点女子医大」といったジェンダーや生命倫理、社会的差別などをテーマとした作品で知られる。TEDが選ぶ20人の「TED Fellows」に選出され、2019年4月バンクーバーで開催されたTED2019に登壇。著書『はみだす力』。共著『ネットで進化する人類』(伊藤穣一監修)など。

AIが知らずのうちに人種差別、性差別していることがある

私が大学で数学とコンピュータサイエンスを専攻し、テクノロジーの世界にそれなりに関わってきた中で、見えてきたものがあります。

それは、テクノロジー業界というと、米英だと白人男性エリート層、日本だと日本人男性エリート層中心で、視点がかなり偏ってしまっていることでした。テクノロジーは世界のいろいろなことに変革をもたらしているけど、視点が偏っているせいで、悪意なく特定のコミュニティに不利な状況をデザインしてしまうことがあるんです。

分かりやすい例で言えば、Amazonが人材採用のためにAIを使ってたんですね。AIというのは過去のデータからラーニングして決断をするので、Amazonが過去に女性をあまり採用していなかったことをそのままラーニングして、履歴書の中に「女性」に関連したワードが含まれているだけで減点していたんですね。

つまり、女性差別するAIというのができちゃったんです。Amazonはそれに気づいて、そのAIを使うのを止めました。気づけただけでも幸いで、気づかずにそういうものを設計して、使い続けている企業や公共機関は今もたくさんあると思います。

スプツニ子!さん

例えば、アメリカの裁判所では、判決や仮釈放の判断にあたって被告の再犯率を予測する「COMPAS」というプログラムが使われています。黒人のほうが再犯率が高いというデータを前提としたアルゴリムが、黒人に対して不利な決断をしているのではないか、ということがアメリカではいま問題になっています。AIが知らずのうちに、人種差別、ジェンダー差別をしてしまうことがありうるんです。

Facebookも最初は出会い系のソーシャルメディアだったのが、今や地球全体のコミュニケーションインフラになった。しかも、大統領選出の過程に影響力を与える、国の政治まで動かすようになっています。つまり、エンジニアが書いたコードが、政治や社会倫理に、結果的に関わってしまうことがある。それを知らないふりをすることはできないんじゃないか、と思うのです。

私はそういったテーマで思考や議論を促したいと思って「問いを立てるデザイン」という授業を東京大学大学院の工学部で今年、展開しました。学生たちの多くはAIやブロックチェーンなどへの関心が強い。だからこそ「自分たちの作っているものは社会にどんな影響を与えるのか」を考える授業にしたいと思いました。

「10年後20年後も安定している」と思うこと自体がリスク

テクノロジーを巡る課題は、複雑、多様化してはいますが、私はいつもテクノロジーの領域から刺激を受け続けています。エンジニアの中には効率とか有用性に最大の価値を置く人がいます。

私もプログラマ時代は、いかに問題を早く解いて早く帰るかということに命を賭けていました。そういうタイプのエンジニアも最高で必要だと思います。

けれど、同じテクノロジーの世界でも、例えば起業家とかアイデアを創出するタイプ、スティーブ・ジョブズみたいにビジョンを創出するタイプの人は、イマジネーションがすごく大事。テックの素養を持ちつつも、今ここにない何かを作るためには想像力が不可欠です。

そして思い描く未来に進んでいくためには、いかに人を夢を語り、説得しながら、リソースを集めるか、その推進力が不可欠になります。それはアーティストも同様だと思います。

スプツニ子!さん

いずれにしても、テクノロジー業界は面白い。会う人会う人すごく聡明で面白くて、思考のレベルとか速さとか行動力が、やはり、他の業界とは違うような気がします。

しかも今は、テクノロジー×法律とか、テクノロジー×モビリティとか、どんな分野もテクノロジーと掛け合わせることで、次に進もうとしている段階。だからこそ面白いことが次々に発生します。

私が出会うテクノロジー界隈の人たちは、伝統的な大企業に勤めてないとか、伝統的なキャリアではないとか、伝統的な女性像ではない人が殆どです。大企業に就職して出世すればローンでマイホームが買えるとか、そういうことをさっぱり考えない人たち。

逆に言うと、大企業に居続けたいとか専業主婦になりたいって人は、10年後20年後もその安定が続くと思っているのかもしれませんが、そのスタンスのほうが私にはビックリです。彼らからすると私たちみたいなタイプがビックリなのかもしれないけれど(笑)。

成長しないことや変わらないこと、旧来のシステムに依存するほうが、今の時代はリスクです。そんなリスク、よく取れるなあと、そう思います、特に若い人たち。変わらなければ、いずれどん詰まりになる。それが見えているはずなのに。

「自分はこれが絶対できる」と思えば、仲間が集まってきてくれる

最近はテレビを見ていても「日本スゴイ!」みたいな番組多いですよね。そういう番組にぼぉーと癒されている瞬間にも、日本は経済も学力もどんどん下がってます。

社会を変えたい、技術革新を起こしたいという気持ちと、既得権益や習慣を守りたいっていう気持ちは反している。本音のところでは、変わりたくないという人が多いんじゃないかという気さえします。

そういう状況を変えるのがエンジニアなんじゃないかと期待はしています。テクノロジーは問答無用で世界の仕組みを変える力がある。エンジニアの皆さんは、絶えず自分をアップデートしながら、新しい技術への好奇心を持ち続けてほしいと思います。

そしてとても大切なのが「自分はできる」という自信。私はもし何か新しい挑戦をしたかったら「自分なら絶対できる」って暗示をかけちゃうんです。

誰しも新しいことをやる時は、恐怖と向き合っている。変なことを始めたら失敗するんじゃないか、叩かれるんじゃないかって。でも失敗っていうのは、屈して諦めた時に初めて失敗になるんであって、学習して次に繋げることができたら単なる成功への道筋です。

スプツニ子!さん

いざやると決めたら、これは絶対できると思い続けることが大事だと思います。もちろん「地球を四角くする」というのは、どんなに自信があってもやらないですけど。

自分ができそうなことについては、誰と組んだら実現可能性が高まるのかとか、誰に話をしたらリソースを集められるかとか、自分の頭の中で精査して、実現まである程度の道筋が立ったら、その時点でバシッと“自信スイッチ”をONにしますね。

ビジョンに自信を持てれば、人が集まってきて、協力してくれます。もし私にチームを作る能力があるとしたら、たぶん何をやっていても「これは絶対にうまくいくし、世界を良い方向に変えられる」と本気で思っていて、それをチームに伝えるからなんだと思います。

そうやって、最初は30%だったかもしれない確率を100%に高めていく。本人が「できる」と思うことによって成功の確率が上がるんだったら、できると思った方がいいですよね。しかも、無料で確率アップなんですから。それにこれって、最初から100%の確率でできることをやるより、数倍も面白いと思いません?

エンジニアにはそういうチャレンジを、ぜひ楽しんでほしいなと思います。